魔法の言葉

tetteke2005-02-09

picopico-hammerさんがピコピコ日記の中で使っている"魔法の言葉"っていう表現が大好きです。かおりんが、梨華ちゃんにかけた「ポジティブ」という魔法の言葉。てってけは、妙に魔法という言葉が好きでして、ドラクエみたいなゲームやってても魔法使いマンセーな人で、スクエアエニックスのオンラインゲーム「クロスゲート」の中でも最強魔法使いを目指して炎と氷の魔法使いをやってましたよ。あと、隕石を落下させるメテオって魔法もあったんですけど、それも極めようとしてました。レベルが上がるにしたがってだんだん大きな隕石が落ちてくるんですけど、極めると最後にはコロニーが落ちてくるんじゃないかと思ってました。はい、話がわりとどうでもいい方向へいきました。


なぜ好きなのかっていうと、これも演劇のほうから来てまして演劇集団「キャラメルボックス」の作品で「TWO」という作品があるんですね。ハーフタイムシアターと呼ばれる45分の短編演劇なんですけど。このハーフタイムシアターってのは、社会人が仕事帰りに軽い気持ちで1本演劇を見てもらうにはどうしたらいいか?っていう発想から、じゃあ時間を短くして値段も安めにしてやってみようというところから始まった企画で第一作が「銀河旋律」ですね。その第4作にあたる作品が「TWO」で、テーマは魔法です。主人公は、なぜか1箇所に定住しない男、2,3ヶ月住んでは違う町へ引っ越す。そんな彼にはある力があった、触っただけで病気や怪我を治す力、ヒーリング能力。


最初は犬だった。友達の飼い犬が車にはねられた。彼は、ただだまってその子犬の体に手を触れた。子犬は何事もなかったかのように立ち上がった。次の日、彼に家には怪我をした犬や病気の猫を持った子供たちが列を作った。子供たちの噂が大人達の耳に入るまで時間はかからなかった。そこには医者に見離された重病人の家族が押し寄せた。「奇跡の手を持った少年」新聞の見出しにそう出た朝、少年は姿を消した。以来、彼の旅は続いている。そして彼はこの町へやってきて、彼女と出会った。彼女の隣の部屋へ越してきた彼は、彼女と知り合い、彼女と彼女の母と弟と平和な毎日を過ごす。そこへある日新聞記者がやってくる。


彼は探していた。10年前「奇跡の手を持つ少年」と書かれた、誰もが忘れている青年を。記事にするため?そうじゃない。彼の友達のためだ。彼の友達は、ボクサーだった。10年に一人の逸材と言われる天才ボクサーだった。ある日、練習のし過ぎで拳を怪我した。しかし、痛み止めをうち試合に出た。パンチを繰り出すたび、彼の拳は砕けていた。破砕骨折、もうボクシングは無理だと言われた。


医者をやっている彼の兄と姉は、新聞記者が訪ねてきたと知って、急いで彼のところへやってきた。彼を引っ越させるためだ。もう10年もこんなことをしている。新聞記者は次ぎ来るときは、友人を連れて訪ねてくると言っていた。彼にその新聞記者の友人を治させるわけにはいかない。彼はとりあえず、彼女の家に身を隠すことになった。彼女の弟の英語の家庭教師をしていたという縁もある。彼女の母にも事情を説明した。にわかに信じがたい話だったが、彼女の母は信じてくれた。いや、信じたかった。自分の息子のために。中核心房欠損症、それが彼女の弟の病名だった。普通に生活している分には問題はない。ただ、心臓に穴があいていてきれいな血と濁った血が混じるため、激しい運動は出来ない。そういえば、弟は走るたびに姉である彼女に怒られていた。母は彼に、そんな息子を普通の子供と同じにしてほしいと頼んだ。


新聞記者は彼の兄に怒った。約束が違うと。友人を連れてきたのに彼はいなかった。自分は記事には書かない。誰にもしゃべらない。だから友人を治してほしい。彼は自分の部屋へ戻ってきた。彼女の母と弟と一緒に。彼女は母が彼に頼んだことを察した。どーして?その二人を治したら、彼は、彼の体は・・・。彼は彼女の弟の体にそっと手を触れた。彼の腕がしびれる。最初は指先がしびれる程度だった。次の日には中指の間接が動かなくなっていた。今では手首より先がまったく動かない。


ボクサーのほうに向き直り、さぁ、はじめましょうか。「あんた、本当にそれでいいのか?」兄と姉が必死に止める。「お前は医者ではない。」でも、僕には医者に治せない患者も治せる。「お前のやっていることは自殺と同じだ。」そうさ、ただの自己満足さ。でも、僕は何のために生きている?英語を教えるためか?兄さんや姉さんにやっかいをかけるためか?そうじゃない!何かをしたい。何もしないで生きるなんていやなんだ。僕が何かをしてるって実感できるのは、誰かの役に立っているときだけなんだ。さぁ、あなたの手を見せてください。「・・・・、いや、俺はやめておこう。俺はまだ25だ。今からでも別の生き方を探せるさ。あんたに会えて良かったよ、ありがとう」ボクサーはそういうと去っていった。彼は疲労で倒れた。


次の朝、彼は街を出て行く決心をしていた。旅先から彼女へ手紙を出そう。それで許してくれるとは思わないが、他に道がない。僕がここに残ることは出来ないんだ。バス停へ行くと、彼女がいた。


(て゜Д゜)<前にもあったね、こんなこと
川* ’ー’)<黙っていくつもりだった?
(て゜Д゜)<手紙を書くつもりだった
川* ’ー’)<それで私が許すと思う?
(て゜Д゜)<思わない。でも、僕には他に方法がないんだ
川* ’ー’)<もう一つあるんじゃない?
(て゜Д゜)<分かってるよ。ここに残れっていうんだろ。でも、それは出来ない。
川* ’ー’)<違うわよ。私も一緒にいくの
(て゜Д゜)<ええ!だって、僕達、恋人同士でもないのに
川* ’ー’)<そうだったの?
(て゜Д゜)<だって、好きだよとか、I love you honeyとか、一言も言ってないじゃないか
「天の声」<じゃ、言えよ!
川* ’ー’)<じゃあ、ありがとうでいいわ。私はてってけさんについて行くって言ってるのよ。
(て゜Д゜)<それは、言えないよ。君を幸せにする自信がない
川* ’ー’)<何言ってるのよ。てってけさんが「ありがとう」って言ってくれれば
川* ’ー’)<私はそれで幸せになれるのよ
川* ’ー’)<意外に簡単でしょ
(て゜Д゜)<そうだね、魔法みたいだ
(て゜Д゜)<ありがとう
川* ’ー’)<聞こえない
(て゜Д゜)<ありがとう!
川* ’ー’)<聞こえないの!
(て゜Д゜)<あ「エンディングテーマが客席中に広がり二人の会話は聞こえない、そして暗転」
明かりがついたときには、ステージ上に全キャストがそろい、お辞儀。


魔法なんて馬鹿馬鹿しいお話ですが、人は時として魔法のような不思議な力を発揮する。それは、コンサートツアーのラストのステージだったり、9回裏の逆転満塁ホームランだったり、延長ゴールデンゴールのW杯出場を決めるゴールだったり、舞台の千秋楽公演の熱演だったり、たんぽぽ畑だったり、辻ちゃんだったり。もしかしたら、人間誰でも一生に一度くらいは魔法が使えるのかもしれない。でも、きっとそれは、自分のためには使えないんだ。


・・・・何も見ずに頭の中にある記憶だけでここまで書く自分が怖い・・。ネタがないので、ハーフタイム演劇のあらすじを1本紹介してみました。一部都合のいい配役になってます。